さて、ジョージ王最後の歌です。"7. You'll Be Back"、"21. What Comes Next?" に続いて3曲目。最後の歌ではあっても、最後の登場ではありませんよ。
<あらすじ>
ワシントン大統領辞任の報告を受けたジョージ王は、権力者が地位を自ら降りることが信じられずわが耳を疑う。次いで大統領の後任がかつて会談に訪れた小男のジョン・アダムズであることを知らされて爆笑。アメリカが混乱に陥るのを高みの見物しましょうと、舞台袖に。
このブログではジョージ王の前二曲は、ブロードウェイ・オリジナル・キャストのジョナサン・グロフの印象で訳しています。ちょっとオネエ風だけど、完全にそこまでいかない、ような。ただし、私が見た舞台のジョージ王は、『ハミルトン』オフ・ブロードウェイ上演時のオリジナル・キャストで、現在また復帰しているブライアン・ダーシー・ジェイムズ(Brian d'Arcy James)―復帰したときの「戴冠式」の映像がありますね。グロフより一回り年上のベテランで、大事なポイントはオネエ度がはるかに上(演技の話ですけど)。というわけで、ジェイムズ調で今回は行きます。
聞いたわよ、
ジョージ・ワシントンが権力を捨ててフツウの人になるんだって。
それってマジ?
そんなことが人間に出来るなんて考えたこともなかったわ。
でもヘンよねえ、
これからもずっとリーダーをとっかひっかえするつもりかしら?
だとしたら、次は誰?
あの「国」にワシントンと同じぐらいの格があるやつ、他にいたっけ?
国、にカギカッコがついているのは、舞台でジェイムズが、引用符(” ”)を表すしぐさ(両手を前に上げてチョキを出して、伸ばした指をくいくいと曲げる)をしていたから。歌い方も "country" に強調が入っていますね。つまり、私はあんたらのこと、国だなんて認めてないからね、ということ。
ここで伝令がやってきたジョージ王の耳に何かを囁く。見た舞台では、一度聞いてから、"What?" と大声でもう一度聞き直していました。
ジョン・アダムズ?!
知ってるわ。
嘘でしょ。
あのチビの男、会談に来たわよね。
もうむかしも大むかし、
いつだった、85年?
お気の毒ね、あいつ生きたまま食われちゃうわ!
大洋が盛りあがり、帝国は没落する。
ワシントンと並べると、どいつもこいつも小物よね。
こっちで一人
あいつらがてんてこ舞いするのを見物しようか、
仲間割れして、お互いを引き裂き合うのをね。
ほんとにまあ、こりゃあ見ものだわ!
「ジョン・アダムズ大統領」だってさ。
グッド・ラーック!
「チビ」のところで笑いが起きていたけど、アダムズ=小男、というのは定番ネタなのかな? 『ハミルトン』では名前が出てくるだけで登場しないのも含めて、ちょっとアダムズは可哀想な感じ(モンローのように名前さえ登場しない重要人物もいますが……)。ともあれ、ジョージ・ワシントンは、アメリカ合衆国の内から見ても、外から見ても、まさに大黒柱だったわけで、歴史はふたたび "What Comes Next?" な局面に入りました。
演出では、この曲ではジョージ王は奥に帰っていかず、舞台の向かって左端に移動、召使が置いた椅子の位置が悪い、と置き直させて、どすんと腰を下ろします。そのまま、次の曲はそこに居て……。ジェイムズはいかにもコメディアンという感じでしたね。歌もすごく(当たり前ですが)うまいのですが、二枚目で長身のグロフが演じるほうが面白いだろうなあ……。グロフは、ジェイムズは天才だから真似できない、自分自身のスタイルを作る必要があった、とインタビューで言っていましたが、グロフのスタイルを他の人が真似るのも無理かもしれません。
余談ですが、ジョナサン・グロフといえば、podcast での初の?本格ミュージカル 36 Questions が話題になっていますね。
36 Questions — Two-Up - Two-Up Productions
聴いてみましたが、いろいろ工夫があって面白いです。音声だけで、3時間ほど。結構集中力が要って、続けて聴くと疲れました。とはいえ、始めると途中でやめられない展開。英語は歌の部分も含めてとても聞き取りやすいですので、ぜひお試しください。
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