"33. I Know Him"の記事でもちょっと触れた podcastミュージカルも、そうした試みのひとつ。タイトルは 36 Questions。内容がよいのもありますが、podcastというメディアもおなじみになってその分マンネリになってきた、その空気を打ち破って新しい可能性を追及している、と評価が高いようです。
36 Questions
『ハミルトン』ジョージ王役、『アナと雪の女王』クリストフ役などで人気のジョナサン・グロフ (Jonathan Groff)と、ジェシー・シェルトン(Jessie Shelton)が主演。最後にちょこっと登場する人物がいるのと、あと、飼いアヒルが鳴いているのを除けば、基本的に二人劇。グロフはさすがの安定感。シェルトンは Hadestown (ギリシャ神話のオルフェウス/エウリディケの話を下敷きにしたミュージカル)出演の若手女優[主演と書いていたんですが違いますね。勘違いでした]。ちょっと(というかかなり)問題がある女性をうまく演じています。作詞作曲・脚本はクリストファー・リトラー(Christopher Littler)とエレン・ウィンター(Ellen Winter)。podcast 3回分に分かれています。各一時間ほど。
タイトルの "36 Questions" は、心理学者が作った質問リストで、新しく会った二人が一気に親密になりたいときに使うらしい。こちら、『ニューヨークタイムズ』の記事があります。さらにこちらが、心理学者による論文。
The Experimental Generation of Interpersonal Closeness: A Procedure and Some Preliminary Findings
雑誌とかに載っている心理テストなんかよりは、はるかに根拠があるテストではありそう。ちなみに最初のいくつかを訳すと、
1. 世界中の人から誰でも選んでよいとして、あなたがぜひディナーを共にしたいと思うのは誰ですか?(Given the choice of anyone in the world, whom would you want as a dinner guest?)
2. 有名になりたいですか? どんなかたちで?(Would you like to be famous? In what way?)
3. あなたは電話を掛ける前に、あらかじめ何を言うかを練習することがありますか?それはどうして?(Before making a telephone call, do you ever rehearse what you are going to say? Why?)
4. あなたにとって「完璧な」一日にはどんな条件がありますか?(What would constitute a “perfect” day for you?)
といった具合。まあ、そもそもこんな突っ込んだ質問を時間をかけてすること自体、そもそも好意がないとありえないし、この後32問もあって、それだけ一緒にいりゃあ親密になるのは当たり前でしょ、という気もしますが……。
ジュディス・フォード[ナタリー] (Judith Ford [Natalie]):
ジュディスが本名だが、ナタリーという偽名を使い、ジェイスと結婚。以降、偽の経歴をつくりあげる。子供時代から色々苦労したらしい。iPhoneを使ってあれこれ録音を残す趣味?がある。
ジェイス・コンリー(Jase Connolly):
妻が偽名で、経歴も実際は違う人物であることが判明、ショックを受けて失踪。現在は子供時代を暮らした家が崩壊しかかっているのを改装中。親はレズビアンのカップル(the moms)。職業は教師。迷い込んできたアヒルを飼っている。
基本的にこの二人しか出てこない、二人劇です。あらすじ、
Episode 1
子供時代に住んでいた家を改装しながら暮らしているジェイスのもとに、ジュディスが押しかけていく。ちょうど嵐だったこともあり、ジェイスは不承不承ジュディスを家に入れてやるが……。
Episode 2
復縁を希望するジュディスが、始めて出会った時にもした「36の質問」を試そうとジェイスにもちかける。質問が進むうちに二人は悪くない雰囲気になっていくが……。
Episode 3
Episode 3
(ネタバレになるのでパス)
という感じです。あとは、設定として、ジュディスの iPhone (第一世代)に録音された音声だけで構成されている(一録音ごとに録音開始、終了の音が鳴る)、というのさえ知っていれば、ある程度の英語力があれば楽しめるのではないでしょうか。
隅々まで気を配った、よく出来たショウになっていますが、もちろん舞台上演と比べて段違いに安上がり。ブロードウェイが興行収入的には調子がいい、その一方で製作コストが右肩上がりで、クリエイターにとってはストレスの多い環境になっている。しかも、才能はひしめいている、ということで、周辺を見ていくと、このように楽しめる試みが新しいかたちでたくさん生まれているかもしれません。
他の一例をあげると、BARS Workshop。このブログのどこかですでに触れたかもしれませんが、ダヴィード・ディグズ(ラファイエット/ジェファソン)と、スポークン・ワーズ・アーティストのラファエル・カサル(Rafael Casal)が代表で、役者や素人を集めて(サイトからアプライして選ばれれば、あなたや私も参加できるようです)、ラップで様々なジャンルからの作品を再解釈し、パフォーマンスにしていく、それを動画として最終的に発表する、というプロジェクト。現在、2回目までの作品が YouTube などで公開中。第3回もすでにワークショップは終了しているので、もうすぐ動画がアップされることでしょう。
上にリンクしたページにも出ていますが、ヒップホップMCのファロア・モンチもサポートで?参加していて、彼のちょっとしたパフォーマンスの映像が見れます。
Pharoahe Monch Spits about addiction
ちょっと頼まれてこれ、ですから、何というか、すごいです。
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