アンソニー・ラモス(Anthony Ramos; b.1991)
ジョン・ローレンズ/フィリップ・ハミルトン役。ブロードウェイ・オリジナル・キャストで最年少。プエルトリコ系で、NYブルックリン育ち。ヒスパニックのニューヨークっ子ということで、ミランダにいちばん近い出自ですね。podcast、The Room Where It’s Happening でインタビューが聞けます。
http://www.earwolf.com/episode/anthony-ramos-making-life-onstage/
ペギー・スカイラー/マライア・レノルズ役のジャズミン・セファス・ジョーンズ(Jasmine Cephas Jones)と恋人同士らしく、ボスのミランダと彼女が毎晩キスするのを見るのはどんな感じ?と司会に訊かれています。ほっといたれよ!
ラテンアメリカやカリブ海のスペイン語圏系の人たちを中心にヒスパニック(あるいはラティーノ)と呼びますが、この呼称はわかりにくいところがあります。元々はヨーロッパ系でもアフリカ系でも、アメリカ大陸のスペイン語圏を家系が通っていればこのカテゴリーに入る(アメリカ合衆国内の文化的カテゴリーです。ちなみに、あまり知られていませんが、アラブ系やユダヤ系はアメリカの国勢調査上には登場せず、「白人」にカテゴリーされます)。さらに、スペイン語圏以外のカリブ海地域(ジャマイカ、ハイチ、そしてアレグザンダー・ハミルトンの故郷・ヴァージン諸島)からの移民も乱暴にヒスパニックに入れてしまうことも。ラモスは容貌からしてヨーロッパ系とアフリカ系の両方の血が入っている、ラテンアメリカ・カリブ海のカテゴリーでいえば、「ムラート」に当たりますね。ミランダはヨーロッパ系のヒスパニックで、その二つのカテゴリーに現在のアメリカ合衆国でどのぐらいの違いがあるのか、微妙すぎてわかりません・・・。アメリカ読みでは「レイモス」と呼ばれることもあるようですが、スペイン語圏読みで「ラモス」にしておきます(上のpodcastで本人は、まあどっちでもいいよ、と言っています(笑))。[追記:ミランダも遠い母方の祖先にアフリカ系の女性がいるようですね。お母さんの写真を見る限りではまったく分かりませんが。]
ダヴィード・ディグズ (Daveed Diggs; b.1982)
マルキ・ド・ラファイエット/トマス・ジェファソン役。黒人の父とユダヤ系の母のあいだに生まれる。ダヴィードは “David” のヘブライ語読み(もともとは旧約聖書に出てくるユダヤの英雄・王ダヴィデ)。アヴァンギャルド・ヒップホップ・グループclipping所属で、キャストの中では唯一ラッパーが本業。ミランダとともにフリースタイル・ラップ・グループのFreestyle Love Supremeのメンバーでもある。インタビュー動画:
Daveed Diggs On "Hamilton" | AOL BUILD
オバマ元大統領を見てわかるように、アフリカ系の血が半分でも、もっともっと少なくても、アメリカでは「黒人」にカテゴライズされます。アフリカ系=黒人ではなく、アメリカ合衆国の歴史と文化的背景で人種カテゴリーも決まっているということを知っていたほうがいいかもしれません。かつては「一滴の血ルールthe one-drop rule」(一滴でもアフリカ系の血が入っていたら黒人とみなされる)というのが公式・非公式にあって、今でも完全にはなくなっていない。現在は、国勢調査上は自己申告なので、アジア系100%でも「白人」と言い張れば「白人」ではありますが、それと社会通念とはまた別の話で・・・。ディグズの自己紹介ラップがこちら。ご家族も出演です。
オキエレテ・オナオドワン(Okierete Onaodowan; b.1987)
ハーキュリーズ・マリガン/ジェイムズ・マディソン役。ナイジェリア系。名前の発音がこれでいいのか、動画などで点検した後でもこれでいいのかわかりませんが・・・。オゥク、インクレディブル・オゥクという呼び方でも(ファンです!とアピールしながら言うと)大丈夫そうです。『ハミルトン』の中ではいちばんの愛されキャラではないでしょうか(英語でいえば、“How can you not love Hercules Mulligan!”)。インタビュー動画:
Okieriete Onaodowan Discusses His Role In "Hamilton" | BUILD Series
アフリカ系といってもいろいろで、先祖代々のアメリカ黒人と新しいアフリカ系移民では、社会的立場が違ったりします。オナオドワンは名前からも分かる通り新しいアフリカ系移民の家系。かつては移民はアメリカ風の名前に変えていたりしましたが、今では先祖の国の名前をそのまま用いることも多いですね(読み方うんぬんで苦労はしそうですが)。上のリンクのビデオは面白くて、演劇活動というのがアメリカの教育現場でどのような役割を果たしているのかがよくわかります。オナオドワンはアメフト選手を目指していたのに怪我で挫折、そのあとグレ気味で、でも演劇部に行くと居場所があって助かった、という旨のことを話しています。日本語のヒップホップ文献で、2Pacは高校の時に演劇部だったから本当の不良じゃないんだ、的なことを言っているのを読んだことがありますが、行き場所のない不良の居場所のひとつが演劇活動ということなんですね。
というわけで、彼ら三人は、「黒人」にカテゴリーされたとしても、それぞれまったく違った歴史を背負っているわけです。「白人」とは何なのか、も気になってきますね。ミランダはヒスパニックだけど、「白人」じゃないの?
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