そこへスマホをもったアフリカ系の、いかにもラッパーという若者が登場。点呼をとります。この兄ちゃんがかなり黒人英語なので、ちょっと聞き取りづらい。雰囲気はパーフェクトですが。点呼終わり、簡単な説明、ちょっと離れたところに停めてあったバスへと移動して乗り込みます。席に着くと、撮影などについての注意事項。バスの外を撮影するのはOKだけど、中のパフォーマンスをとるのは勘弁、ということらしい。
説明が終わると、メインMCの登場。集合場所で待っていたときに、一目でいかにもヒップホップなおっちゃんが通っていったんですが、その人物でした。Grandmaster Caz。ボケッとして始めピンとこなかったのですが、ヒップホップ史の本には必ず登場する伝説的DJ・MCではないですか! 最初からかなりのテンションでガンガン客を煽ります。バスはセントラルパークの西側、マディソン街を北へ向かいます。途中、The Notorious B.I.G.を始めMCやミュージシャンたちの葬儀が多数行われた Frank E. Cambell - The Funeral Chapel や映画New Jack City に登場するホテルを紹介しがら進み、スパニッシュ・ハーレムへ。途中、ヒップホップとは何ぞや、という問答。乗客ひとりひとりが答えさせられるので、参加する人は答えをいくつか用意しておいたほうがよいです。ひとつだと前の人に言われちゃうので。
最初のストップはスパニッシュ・ハーレムの公立中学校 13 Public Junior High School。塀一面にグラフィティが書かれています。しかもこの壁画、一年に一度すっかり塗りつぶして、グラフィティ・アーティストが一堂に会して描き直すらしい。地図で確認すると、The Graffiti Hall of Fame、グラフィティの殿堂、とあります。どうやら体育の授業中?
グラフィティはポップでカラフルな画風が多かったですね。下の写真、奥に立っている青い帽子の男性が Grandmaster Caz。画像で見るとピンときませんが、実際に見ると、現役MCとして40年!活動してきた風格がすごいです。
ちなみにグラフィティは「ヒップホップの4要素」の一つ。他の3つは何でしょう?、というクイズはさておき、DJやMC、B-boyingなどが登場する前に、ヒスパニックを中心にマイノリティの若者の表現のための下地を作っていた。とはいえ、最初のグラフィティはカラフルなものではなく、下の写真にあるような自分のニックネームを目立ちそうな場所に描く「タギング」と呼ばれるものでした。
上がメトロの高架をくぐるトンネルで、そこを抜けると、バスケットボールのバスケットがないコートのような?場所へ。そこにまた、いかにもヒップホップぽいなあというおじさんが一人。と思ったら、この人もヒップホップ史に名を留める celebrities の一人でした。Mighty Mouse、早くから活躍している B-Boy で、振り付けの仕事も多数。日本でもダンスに興味がある人なら聞いたことがある名前では?
というわけで、模範のダンス、の後、ショート・レッスン。二人が手をあげ、一人がむりやり引っ張り出され(笑)、簡単(なほうなんだろうな)なムーヴが伝授されます。他人事と笑っていたら引き続き、みなさん円になって~、と声がかかる。(ダンス音痴には)恐ろしいことに、全員踊らされます(しょうがないから、私も踊りました。YouTubeにアップするとかもっと怖いことも言っていたきがしますが、恐ろしすぎて確かめる気になれません)。参加者の中にはヒップホップダンス経験者の女の子もいて超うまい。さらにノリノリになったドイツ人家族のお父さん(どうやら若いときにヒップホップダンスでぶいぶい言わした経験があるらしい)が ちょっと調子に乗って、Mighty Mouse にダンスバトルを申し込みます。快く応じるダンスレジェンド、Wow!と盛り上がる一同。勝敗は・・・。
再びバスに乗り込みさらに北へ移動。途中の壁にもグラフィティ。壁あるところにグラフィティあり。
スパニッシュ・ハーレムから、スパニッシュなしのハーレムに入っていきます。そして、アポロ劇場に到着。多数のアーティスト、パフォーマーを輩出したアフリカ系演芸の殿堂。行きかう人はだいたいアフリカ系ですね。
有名なアマチュア・ナイトも健在です。
入口前の地面には、有名ミュージシャンの名前が刻まれた銅板が。こちらはマイケル・ジャクソンと、エラ・フィッツジェラルド。
たくさんありますが、だいたいは知っている名前。アポロ劇場に出演したアフリカ系のミュージシャンは数知れず、ここに名前が刻まれているのはその中でもトップの人たち。ちなみに下の写真でお尻が映っているどっしりした男性はニュージーランドからきたプロのヒップホップ・アーティスト。話しかけると、タダでCDをくれました。マオリ系らしく、ダンスの時にはマオリの舌を出して威嚇する仕草で締めていた。
ジェイムズ・ブラウンに、最近亡くなったプリンス。
最後にチャーリー・パーカーと記念撮影。
さて、またバスに乗り込み移動です。途中、Grandmaster Caz のキャリアの説明が入ります。"Rapper's Delight" というヒップホップ初のヒットシングルがありますが、第2ヴァースを書いたのが Grandmaster Caz。ただ、"Rapper's Delight" は Caz たちのパーティーに顔を出していたピザ屋の店員が声をかけられて、ついついレコーディングまでいっちゃって、しょうがないから憶えていた Caz らのリリックをそのまま(本当に名前をコールするところ― "C-A-S-A-N-O-V-A and the rest is F-L-Y" は Grandmaster Caz の別名―までそのまま、笑)コピーでラップしちゃった。それが大ヒット、というわけ。やっぱりというか何というか、いまだにCazは1ドルももらっていないそうな。というわけで、"MC's Delight"ってのを作ったから聴かせてやるぞ、とバスの中でライブ・パフォーマンス! "Rapper's Delight"の「三人仲間を連れて来たぜ I brought three friends along」のところが、「一人で十分だからぜんぶ一人でやっちゃうぜー!」になっていたのが大ウケ。
塀あるところにグラフィティあり。下の写真、左下のグループは最近移民してきたアフリカ系の模様。アフリカ系といっても多様です。
しばらく移動して、ふたたび下車。1999年に惜しくも早逝したハーレム出身のMC、Big L のミューラル(壁画)。Jay-Z とのフリースタイルがこちら―Jay-Z の声が若い(笑)。ネットに Eminem との共演の動画もありますが、二人のスタイルはかなり似ていますね。Grandmaster Caz によると生きていれば、現在もヒップホップを代表するMCだっただろうとのこと。ハーレムで射殺されて亡くなっています。ヒップホップの歴史には40年という期間とは割りが合わないほど死者が多い。”Shout out to lost soldiers of Hip Hop"。
歩きながら見上げると、マルコムX大通りのサインが。ニューヨークの(アメリカ合衆国の街の)通りには人名がつけられていることが多いですが、少しずつ切り替わって新しい時代を反映しています。『ハミルトン』、"28. The Room Where It Happens" にも、Clemant Street が Mercer Street に改名される、というところがありましたね。これで "The Malcolm X legacy is secure."といえるかというと微妙ですが。
カラフルなアフリカ民族衣装を着て歩く女性。
どうやってあそこに描くんでしょう、という位置にもグラフィティが。建物は古いものも残っていて、様式もいろいろ。それぞれに雰囲気がありますね。
くりかえしですが、空がきれいです。
グラフィティの塀の向こうにアパート。
バスで移動中、バスケットボールコートの脇を通る。ハーレムの日常風景。
さらに北へ向かいます。橋がハーレム川の向こうにあるブルックリンへ何本ものびている。
そのうちの一つを渡ると、どこに着くでしょうか? (トンネルか橋どっちにする?という Caz の質問に、乗客みんなが橋~!とコーラス。そりゃそうだよね。)
はい、ヤンキー・スタジアムに到着。しばらく記念撮影タイム。今のスタジアム、風格がありますが、2009年に新しく建てられた球場です。
すでにブルックリンに入っています。ここからしばらくハーレム川沿いの道を北上。
さて、目的地に到着。どこでしょうか。ちなみに、ハーレム川を越えた向こう側に見えているのがミュージカル In the Heights の舞台、マンハッタンのワシントン・ハイツ。Grandmaster Caz によれば、「ドミニカ共和国」だそうで(笑)。離れてみると本当に heights で高くなっているのが分かりますね。
(続く)
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