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第二幕、主要登場人物(第一幕から登場している人物は省略):
[ 第一幕の時と同様、名前のリンクは Biography.com (www.biography.com)より。]
トーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson):
1743年生、1826年没。アメリカ合衆国初代国務長官、第2代副大統領、第3代大統領(任期1801年‐1809年)。「アメリカ合衆国独立宣言」(1776)を起草した「建国の父」代表格の一人。自由・平等を謳う啓蒙主義者である一方、ヴァージニアで奴隷を多数所有する大規模農園主でもあった。
ジェイムズ・マディソン(James Madison):
1751年生、1836年没。アメリカ合衆国第4代大統領(任期1809-1817)。ハミルトン、ジョン・ジェイ(John Jay)とアメリカ合衆国憲法擁護論『フェデラリスト・ペーパーズ』(1787-1788年)を執筆。以後は連邦における権力の配分についてハミルトンと対立。同郷のジェファソンとともにハミルトンの政敵に。
フィリップ・ハミルトン(Philip Hamilton):
アレグザンダー・ハミルトンとイライザの長男(1782年生)。名前はイライザの父から。自称「詩人」。父ハミルトンと同じ King's College (=Columbia College)を卒業する。
マライア・レノルズ(Maria Reynolds):
1791年夏にハミルトン宅を訪れ、以降1年にわたりハミルトンと関係をもつ。
ジェイムズ・レノルズ(James Reynolds):
マライア・レノルズの夫。妻との浮気をネタにハミルトンをゆすり金銭を得る。
ジョージ・イーカー(George Eacker):
ニューヨークの弁護士。独立記念日のスピーチでハミルトンを批判。フィリップの決闘相手。
こう主要人物を書きだしてみると、『ハミルトン』の登場人物って少ないんですね。第一幕で書き出した人物と合わせると、全部で18人。30年ほどの歴史を語るのに、ずいぶんコンパクトにまとめているなと感心します。
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つづいて、第二幕についての年表(『ハミルトン』劇中の年度を中心に)。
1789 ジェファソン、フランスより帰国(1784年よりフランス大使をつとめていた)、第一合衆国銀行設立についての論戦。
[ “24. What’d I Miss,” “25. Cabinet Battle #1”]
(←"25. Cabinet Battle #1"で、ハミルトンはジェファソンを、俺たちが戦っているときにフランス人と高みの見物をしていたと攻撃していますが、実際の歴史上では、独立革命の戦闘時にはジェファソンはアメリカにいました。まあ確かに戦争は嫌いらしく、ヴァージニアが攻撃されたときに一早く逃げたりしていますけどね。)
1791 マライア・レイノルズとの関係、始まる(1792年までつづく)。
1791 マライア・レイノルズとの関係、始まる(1792年までつづく)。
[ “26. Take a Break,” “27. Say No To This”]
ハミルトンとジェファソン/マジソンの妥協、首都がフィラデルフィアに(10年後ワシントンD.C.に)、第一合衆国銀行設立。
(←『ハミルトン』ではすぐにポトマックあたり、つまり今のワシントンD.C.に首都が移ったように描かれて、フィラデルフィアはすっかり無視されています。ボストンもただ一回軽く言及されるだけ("6. Farmer Refuted")で、ほぼニューヨーク/ヴァージニアで初期アメリカ合衆国史が動いているように見えてしまいますね。ニュージャージーの扱いはひどいし(笑)。)
(←『ハミルトン』ではすぐにポトマックあたり、つまり今のワシントンD.C.に首都が移ったように描かれて、フィラデルフィアはすっかり無視されています。ボストンもただ一回軽く言及されるだけ("6. Farmer Refuted")で、ほぼニューヨーク/ヴァージニアで初期アメリカ合衆国史が動いているように見えてしまいますね。ニュージャージーの扱いはひどいし(笑)。)
[ “28. The Room Where It Happens”]
バー、上院議員となる(ハミルトンの義父フィリップ・スカイラーが落選)。
[ "29. Schuyler Defeated" ]
1793 フランス、イギリスに対して宣戦布告、ヨーロッパの他の国々とも交戦状態に。
フランスへ支援を行うかどうかでハミルトンとジェファソンを中心に論争。アメリカ合衆国はイギリスとフランスの争いに介入しないことを宣言(the Proclamation of Neutrality)。
フランスへ支援を行うかどうかでハミルトンとジェファソンを中心に論争。アメリカ合衆国はイギリスとフランスの争いに介入しないことを宣言(the Proclamation of Neutrality)。
[ “30. Cabinet Battle #2” ]
ジェファソン、国務長官を辞任。
1796 ワシントン、大統領を辞任。
[ “31. Washington On Your Side,” “32. One Last Time”]
(←『ハミルトン』ではジェファソンの辞任を受けてすぐにワシントンも辞任という風に描かれていますが、実際には二人の辞任は3年も離れています。ちなみに、ハミルトンは1795年に財務長官を辞任。ワシントンとつまらないことーちょっと遅刻した―でケンカしたそう、まあ、お互いいろいろ溜まっていたんでしょうが・・・。これはワシントンの大統領辞任より前の出来事です。)
1797 ジョン・アダムズ、合衆国第二代大統領に。敗れたジェファソンは副大統領に。アダムズとハミルトンの不和が表面化。
[“34. The Adams Administration”]
ジェファソンとマディソン、不審な銀行取引(実はマライアとの浮気のためのジェイムズ・レノルズへの支払い)の件でハミルトンを訪問。The Reynolds Pamphlet 出版。
[“36. Hurricane,” “37. The Reynolds Pamphlet,” “38. Burn”]
(←実際の歴史では、1792年にジェイムズ・モンロー(合衆国第五代大統領、「モンロー・ドクトリン」のモンロー)らがすでに同件でハミルトンを訪問しています。モンローがジェファソンに秘密をもらしたと思ったハミルトンがモンローに決闘を申込み、それを収めたのが(なんと!)バーという逸話つき。)
1799 ワシントン死去。
フィリップとジョージ・イーカーとの決闘。ハミルトン、マンハッタン北部に隠棲。
[ “39. Blow Us All Away,” “40. Stay Alive (Reprise),” "41. It's Quiet Uptown"]
(実際には、この事件は1801年に起こったもの。劇作上、1797年のレノルズ・パンフレット事件とつなげるために、時代が繰り上げになっています。)
1800 1800年の大統領選、ジェファソンがバーを破り、第3代大統領に。バーは当時の規定により副大統領になるが、ジェファソンから冷遇される。ジェファソンを支持したハミルトンとバーの関係が悪化。
[“42. The Election Of 1800,” “43. Your Obedience Servant”]
1804 ハミルトンとバー、ニュージャージー州ウィーホーケンにて決闘、ハミルトン死去。
[“44. Best of Wives and Best of Women,” “45. The World Was Wide Enough”]
1806 エリザベス、他の二人の女性と、ニューヨークで初の私立孤児院the Orphan Asylum Societyを設立(現在も Graham Windham というNGOとして存続しています)。
1840 ハミルトンの5男ジョン・チャーチ・ハミルトンが The Life of Alexander Hamilton を出版。
1848 エリザベスの募金活動が実り、ワシントンD.C.にワシントン・モニュメント建立。
1854 エリザベス・ハミルトン死去。
[“46. Who Live, Who Dies, Who Tells Your Story”]
革命を描くというのは盛り上がって分かりやすいですが、それ以後をエンターテインメントとして表現するかはかなり難題のはず。その意味では、ミュージカル『ハミルトン』の本領は、ここからの第二幕にあるのかもしれません。
第一幕の登場人物・年表はこちら。
ミュージカル『ハミルトン』幕間の重要な仕掛け:第一幕でローレンズ、ラファイエット、マリガンというハミルトンの友人3人組を演じていた役者がダブルキャストでそれぞれ、フィリップ・ハミルトン、トーマス・ジェファソン、ジェイムズ・マディソンを演じます。そしてもう一人のダブルキャストは、ペギー→マライア・レノルズ。第一幕でハミルトンを支える役どころだった人々が、弱みや敵となって表れて、ハミルトンを追い詰めていくわけですね・・・。
ミュージカル『ハミルトン』幕間の重要な仕掛け:第一幕でローレンズ、ラファイエット、マリガンというハミルトンの友人3人組を演じていた役者がダブルキャストでそれぞれ、フィリップ・ハミルトン、トーマス・ジェファソン、ジェイムズ・マディソンを演じます。そしてもう一人のダブルキャストは、ペギー→マライア・レノルズ。第一幕でハミルトンを支える役どころだった人々が、弱みや敵となって表れて、ハミルトンを追い詰めていくわけですね・・・。
革命を描くというのは盛り上がって分かりやすいですが、それ以後をエンターテインメントとして表現するかはかなり難題のはず。その意味では、ミュージカル『ハミルトン』の本領は、ここからの第二幕にあるのかもしれません。