2017年3月21日火曜日

”21. What Comes Next" from Hamilton: An American Musical

イギリス国王ジョージ3世、再登場です。『ハミルトン』ではジョージ王の歌はいわゆる "show stopper"で、オーディエンスが大湧きに湧くわけですけれども、作品の展開上も不可欠なストッパーとして働いています。つまり、勢いで突き進むアメリカ人たち(そしてオーディエンスたち)に対して冷や水をぶっかけて、作品の進行上必要なタメをつくる、という意味で。”21. What Comes Next"という曲タイトルそのものが、全曲 "20. Yorktown (The World Turned Upside Down"で独立に熱狂していたアメリカ人に対しての冷や水、いや、それ以上の氷水になっています。

<あらすじ>
イギリス議会の反対で戦争続行が不可能になり、悔しがるジョージ3世。悔しがりながらも冷静に、去っていった「恋人」アメリカに対して、国作りをしていくこれからのほうが大変なんじゃないの、と問いかける。

曲は、"7. You''ll Be Back"のリプリーズ。歌詞を訳すと、以下のとおり。

みんながさあ、
ぼくの戦争は高くつきすぎるから支払いをしたくなっていうんだよね。
もうムチャクチャ!
君がフランス人と浮気したせいで、フランスと、それにスペインとまで
戦うはめになったじゃん。
すっかりブルーな気分だわ。
でもさ、もう別れちゃったていっても、ちょっと質問させてもらいたいんだよね、で

次、どうなるの?
自由になったんだねえ。
みんなを引っ張っていくのがどんなに大変か理解してる?
 一人立ちですってねえ。
あらまあ、ステキー!って、
これからどうなるのかちょっとは分かってんの?

大洋が盛りあがり、
帝国は没落する。
全部じぶんで決めないとだめってたいへんだよー。

ひとりぼっちで、海の向こう側、
大嫌いって国民から言われたりしても、
ぼくのところに這い戻ってきたりしないでよね。

ひとりぼっちだね、君。

世界の最強国となった20世紀以降のアメリカ合衆国を知っている、また民主主義がスタンダードとして考えられるようになった世界に生きている私たちとしては、18世紀末の状況はなかなか理解できないものです。 "20. Yorktown (The World Turned Upside Down)"でハミルトンが言っているように、「アメリカの実験」("the American experiment")はまだ始まったばかりで、その成否を知るものは誰もいない段階。さて、これからどうなることやら。

アメリカ合衆国は歴史の短い新しい国だ、というイメージがあるかもしれませんが、じつは最古の立憲共和政国家、現存の政治制度をいちばん長く続けている国で、その意味では、まともな民主主義(?)を20世紀中盤に手に入れた日本などと比べて、とても長い歴史があるといってもよいですよね。ミッシェル・オバマさんがトニー賞授賞式のパフォーマンス紹介で、「アメリカは私たち国民が作り上げるのです、私たちがこの国と同じように、ヤング、スクラッピー&ハングリーでありつづける限り。」("America is what we, the people, make of it, as long as we stay just like our country, young, scrappy, and hungry.")と言っていました。アメリカ国民以外としては、いつまで "young" なつもりなの?、"hungry" もほどほどにしてちょっと大人になったら?、さすがに ケンカ早いという意味もある"scrappy"はもう卒業でしょう?(正直ちょっと迷惑だよ、言いにくいけど・・・)という気もするところでもありますね。『ハミルトン』は本当に若かった頃のアメリカを描いて現在のアメリカ国民を熱狂させたわけですが、作品のすばらしさとは別に、社会現象としてはいろいろ考えさせられる気がします。

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