まず、ストーリーや言葉、楽曲をつくり上げた3人。脚本/作詞作曲/演出がミュージカル製作の三本柱。それと、オーケストレーションを担当する編曲・音楽監督ですね。
リン=マヌエル・ミランダ(Lin-Manuel Miranda):『ハミルトン』脚本・作詞作曲。
愛称リン(Lin)。
トーマス・ケイル(Thomas Kail):『ハミルトン』演出(Director)。愛称トミー(Tommy)。
アレックス・ラカモア(Alex Lacamoire):『ハミルトン』編曲(Orchestration)、
音楽監督(Music Director)、バンドリーダー。愛称ラク(Lac)。
[ 愛称はドキュメンタリーなどを見ているとこちらで呼び合っていることが多いので、とりあえず書いておきます。もちろん私が彼らの友だちということではありません(笑)。]
一応、それぞれ脚本などと役割が書いてありますが、このクリエイティブ・チームは私たちが通常想像するのとはずいぶん違った綿密な共同作業で『ハミルトン』を仕上げたようです。PBSドキュメンタリー Hamilton's Americaには、小さな部屋に3人がこもってアイデアをぶつけ合い、細かな点まで決めていく様子が収められています。ミランダが3人のミーティングを "cabinet meeting"と呼んでいるのも面白い。『ハミルトン』は、この3人が中心で作品を書いたといってよさそう(もちろん、ミランダの才能が全体を引っ張っているのは当然ですが)。
ケイルもラカモアも『イン・ザ・ハイツ』からミランダのサポートをしている、いわば「ミランダ組」の一員という感じ。でも、映画の「黒澤(明)組」みたいに、リーダーが独裁的にふるまってとは全然見えないですね。俳優陣も含めて、それぞれの意見をとりこんで、よりよいものにしましょう、という雰囲気。このあたりも、新しい時代のクリエイターたちだよな、と。Hamilton's Americaでも、ミランダをせっついて早く曲をかけとせっついているケイルの立場がちょこっと出ていました。そしてアイデアが出てくると明るい雰囲気で軽快にアレンジを生み出していくラカモア。バランスのよいチームですね。
そして、もう一つの三角形。こちらはいかに現場で実際にヴィジョンを実現するかを担当する指揮官・兵站係といった役割。
トーマス・ケイル(Thomas Kail):『ハミルトン』演出(Director)。
アンディ・ブランケンビューラー(Andy Blankenbeuler):振付(Choreographer)デイヴィッド・コリンズ(David Korins):舞台デザイン(Scenic Designer)
ケイルがどちらの三角形にも入っていますが、演出なのでどちらかというとこちらが本職でしょう。ケイルは顔つきからしてタフで(ちょっと怖い?)、全体を見渡しながら引き締める役という印象。二つの三角形の接点にたって、ミランダが提出した作品のヴィジョンと舞台という現実を結びつけている。振付と舞台デザインは性質上、関係がつよいので、練習・リハーサルでブランケンビューラとコリンズは常に相談しながら作業を進めたようです。そうして出来上がったのが、『ハミルトン』のダイナミックな舞台。
コリンズの生み出した舞台デザインでまず目を引くのが、二重の回転舞台でしょう。ヒップホップDJのターンテーブルから「ターンテーブル」と呼んでいるそうですが、右回り左回り、スピードも自由、内円と外円を逆に動かすことも可能、ということで、ダンスと組み合わされてさまざまな効果を生み出しています。ヒップホップ・ミュージカルだからターンテーブルがあるのね、当然だよね、と思う人が多いようですが、コリンズによると、『ハミルトン』の企画に参加しだした頃に提案したもののケイルにいったん却下されたそう。しかし本格的なリハーサルの2週間前ごろになって、セットの椅子やテーブルの移動が間に合わない、ということでふたたび提案したら採用された、とのこと。完成した舞台を知っていると、欠かせない要素がもしかするとなかったのかも、と考えると不思議です(The Room Where It’s Happeningのコリンズの回参照。このPodcastでは、細やかだったり大胆だったりする舞台の工夫が明かされていますので、必聴)。
でもコリンズは、トニー賞で舞台デザイン部門にノミネートされたものの受賞は逃しているんですね(『ハミルトン』からノミネートされた部門で他に受賞を逃したのは、主演女優賞のフィリッパ・スーだけ。まあ彼女の場合は、主演という感じでもないから・・・)。舞台デザイン部門受賞作は She Loves Youというミュージカルなんですが、どんな舞台なんだろう。ぜひ見てみたいです。
ブランケンビューラーの振付は純粋なダンスというよりは、サイン・ランゲージみたいな部分が多いですね。ヒップホップの要素は入っていないわけではないけど、ある意味、『ハミルトン』の中でいちばんヒップホップ的でない部分なような・・・。
振り付けを一般に説明してくれている動画が、なぜか Wall Street JournalのYouTubeチャンネルにあがっています。まずは、"I am not throwing away my shot~"の歌詞に合わせた振り付け。
Choreographing 'Hamilton': The Meaning Behind the Moves
https://www.youtube.com/watch?v=VmYTsOrnWP0
次に、"Yorktown (The World Turned Upside Down)"の兵士の振り付け。
'Hamilton' Choreographer Breaks Down His Moves
https://www.youtube.com/watch?v=gb67f2HLVGM
『ハミルトン』公式チャンネルに、劇場前でのパフォーマンス Ham4Ham での、"The Room Where It Happens"でのバー、そしてふたたび"Yorktown"の振り付けが:
Hamilton Choreographer Andy Blankenbuehler Performs Original Choreography at #Ham4Ham
https://www.youtube.com/watch?v=YMQ5ogjlnUM
タズウェルについての記事がこちら。
http://observer.com/2016/06/hamiltons-costume-designer-talks-about-modernizing-18th-century-style/
他に、『ハミルトン』誕生に大きく寄与した人名をあげるなら、以下の3人でしょうか。
ジェフリー・セラー(Jeffrey Seller):『ハミルトン』プロデューサー(Producer)。
オスカー・ユースティス(Oscar Eustis):『ハミルトン』オフブロードウェイ初演のthe Public Theaterの芸術監督(Artistic Director, Public Theater)。
ロン・チャーナウ(Ron Chernow): 作品の元となったハミルトンの伝記Alexander Hamilton (2006)著者。『ハミルトン』歴史アドヴァイザー(Historical Advisor)。
ユースティスは『イン・ザ・ハイツ』『ハミルトン』を含め、最近、ブロードウェイに刺激的な作品が生まれていく原動力になっている人物ですね。ブロードウェイ劇場もいいですが、The Public Theaterに、次世代の動きを見に行くのもいいかもしれません。
振り付けを一般に説明してくれている動画が、なぜか Wall Street JournalのYouTubeチャンネルにあがっています。まずは、"I am not throwing away my shot~"の歌詞に合わせた振り付け。
Choreographing 'Hamilton': The Meaning Behind the Moves
https://www.youtube.com/watch?v=VmYTsOrnWP0
次に、"Yorktown (The World Turned Upside Down)"の兵士の振り付け。
'Hamilton' Choreographer Breaks Down His Moves
https://www.youtube.com/watch?v=gb67f2HLVGM
『ハミルトン』公式チャンネルに、劇場前でのパフォーマンス Ham4Ham での、"The Room Where It Happens"でのバー、そしてふたたび"Yorktown"の振り付けが:
Hamilton Choreographer Andy Blankenbuehler Performs Original Choreography at #Ham4Ham
https://www.youtube.com/watch?v=YMQ5ogjlnUM
あと、トニー賞衣装デザイン部門受賞のポール・タズウェル(Paul Tazewell)も忘れちゃいけませんね。18世紀の雰囲気を出しながら古臭くない、温かみのある衣装も『ハミルトン』のみどころ。女性ダンサーの服のデザインは女性的でありながら、男性役を演じても不自然ではない、独特のもの。タズウェルは製作チームでは唯一のアフリカ系でもありますね。
タズウェルについての記事がこちら。
http://observer.com/2016/06/hamiltons-costume-designer-talks-about-modernizing-18th-century-style/
他に、『ハミルトン』誕生に大きく寄与した人名をあげるなら、以下の3人でしょうか。
ジェフリー・セラー(Jeffrey Seller):『ハミルトン』プロデューサー(Producer)。
オスカー・ユースティス(Oscar Eustis):『ハミルトン』オフブロードウェイ初演のthe Public Theaterの芸術監督(Artistic Director, Public Theater)。
ロン・チャーナウ(Ron Chernow): 作品の元となったハミルトンの伝記Alexander Hamilton (2006)著者。『ハミルトン』歴史アドヴァイザー(Historical Advisor)。
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