2017年3月3日金曜日

"9. A Winter's Ball" (from Hamilton: An American Musical)

独立戦争で状況が緊迫してきたと思ったら、また一息。"9. Winter's Ball"から"12. The Story of Tonight (Reprise)"では、ハミルトンとスカイラー姉妹との出会い、それから、あっという間の(ミュージカル上ですけど)結婚までが描かれます。

では、まずこのシークェンスのイントロダクション、"9. Winter's Ball"。

<あらすじ>1780年、冬の戦闘が少ない時期に行われた舞踏会。ハミルトンとバーは有力者スカイラー氏の娘をものにできるかどうかで冗談を交わす。

冒頭では、どこかで聞いたようなメロディが・・・。こちらで説明した運命の扉が開くサインです。そのあとも、どこかで聞いたようなフレーズがつづきます。

[Burr] How does the bastard, orphan, son of a whore, go on and on, grow into more of a phenomenon? Watch this obnoxious, arrogant, loudmouth bother be seated at the right hand of the father. Washington hires Hamilton right on sight
But Hamilton still wants to fight, not write. Now Hamilton’s skill with a quill is undeniable.
[バー] 私生児で、孤児で、売女の息子、そいつがどんどん成り上がって、ちょっとした評判になるだって? 見ろよ、鼻つまみもので、傲慢で、大口たたきの、やかましい野郎がわれらが父の右手に座ってるのを。ワシントンは一目でハミルトンを雇ったが、ハミルトンはまだ、書いてばかりはいやだ、戦いたいと言う。まあ、ハミルトンのペンの腕は否定できないがね。

ミュージカルで同じ歌やメロディをくりかえすのを「リプリーズ」(reprise)といいますが、これは "1. Alexander Hamilton"からのリプリーズですね。この始まり方は、以降も4曲(“18. Guns and Ships,” “24. What’d I Miss,” “34. The Adams Administration,” “43. Your Obedient Servant”)で反復されます。語り手としてのバーを使って、話が新しく展開することを示すサインですね。

さて、"~undeniable."の後から雰囲気が急展開、

[Burr] What do we have in common? We're reliable with the ladies! ([ALL] Ladies!) There are so many to deflower! Looks! Proximity to power! [...] Yo, if you could marry a sister you're rich, son.
[Hamilton] Is it a question of if, Burr, or which one?
[バー] 俺たちには似たところもあるんだぜ。女性のあつかいが上手いのさ!([全員]女性たち!)よりどりみどりじゃないか! ほら! 権力への近道だ! [...] なあ、ここの娘のどれかと結婚できさえしたら金持ちだぜ、坊や。
[ハミルトン] できるかどうか訊いてるのかい、バー、それともどの娘を選ぶかってこと?

このあたりのやりとりは、若かりし頃のハミルトンとバーの関係が、ライバルではあるものの、気の利いたかけひきを楽しめる友人同士でもある、という雰囲気がよく出ています。女を馬鹿にして、と怒る人もいるかもしれませんが、どこかのpodcastで、女性が「まるで高校生の男の子が、実際には体験がないのにお互いに虚勢を張っているみたい」と言ってましたが、まさにそんな感じ。優しい目で見守ってあげてください(笑)。

聞きどころは先のリプリーズ以外では、ビースティ・ボーイズの有名フレーズ “Ladies!”の引用(The Beastie Boys, “Hey Ladies”(1989))。やっぱり、高校生の、ほんとうにはモテないんじゃないの?という男の子の雰囲気。ビースティ・ボーイズ自体もカーティス・ブロウの曲(Kurtis Blow, "Party Time" (1983))からサンプリングしていて、ブロウのほうは(1980年代)は本当にモテたんじゃないかという感じ。

軽い感じですけれど、ハミルトンのひとつの運命の変わり目を予告する曲。あくまで導入は軽くするところがうまいのかも。

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